歯周病治療

歯周病治療 歯周病治療

歯周病は、歯が病気になるのではなく、歯を支える組織(歯周組織)に起こる病気です。歯と歯肉の間から入ったバイ菌が歯肉に炎症を引き起こし、さらに、歯肉の中にある歯槽骨まで溶かして、最終的には歯が抜け落ちてしまう怖い病気です。

また、歯周病は「沈黙の病」ともいわれ、初期は痛みや自覚症状がほとんどないため、知らず知らずのうちに進行してしまうやっかいな病気でもあります。そのため、日本人では30歳以上で約80%、40~50歳代ではほぼ90%の方がかかっているといわれていて、成人が歯を失う原因の第一位は、この歯周病なのです。

さらには、末期まで進行してしまうと、歯を失ってしまうだけでなく、全身に悪影響を引き起こす原因にもなります。

歯周病チェック

ひとつでも当てはまる方は歯周病かも?!

  • 朝起きた時、口の中がネバネバする
  • 口臭が気になる
  • 歯肉が赤く腫れたり、痛むことがある
  • 食べ物、特に硬いものが噛みにくい
  • 歯がグラグラと動く感じがする
  • 歯を磨いたときに出血する
  • 歯肉がむずがゆい
  • 歯肉から膿がでたり、唾液がネバネバする
  • 歯と歯の間によく食べ物がはさまる
  • 歯が前よりも長くなったような気がする

歯周病と全身疾患の関係

歯周病は最近の研究によって、全身の様々な病気を引き起こす原因になっていることが判明しています。特に心臓疾患や糖尿病、高齢者の肺炎などとの関連性が注目されています。

歯周病と全身疾患の関係
糖尿病

糖尿病を患っている方は、歯周病菌に対する抵抗力が弱く、歯周病に感染しやすく進行が早いと考えられています。また、歯周病菌により糖尿病が悪化するという調査報告も発表されており、歯周病の治療で糖尿病が改善された症例の報告もあります。

脳卒中

歯周病が遠因となって動脈硬化が起きると、血栓ができやすくなり、脳塞栓を起こす危険性も高まります。歯周病を患っている方は、健康な人にくらべ て、脳塞栓のリスクがおよそ3倍に高まると言われています。

動脈硬化・心筋梗塞

重度の歯周病まで進行すると、歯周病菌が血管内に侵入して、血液の流れにのり、全身の臓器に到達します。歯周病菌が作り出したアテローム性プラークという物質が血液の中に入り込むと、血栓(血の塊)をつくることが証明されていてます。血栓が心臓の血管を詰まらせると、心筋梗塞の原因になります。

誤嚥性肺炎

肺に細菌が繁殖して引き起こされる病気が誤嚥性肺炎です。誤嚥性肺炎の原因となる細菌の多くは、口腔内で繁殖した歯周病菌だと考えられています。

歯周病の原因

歯周病の直接的な原因は、細菌の塊であるプラークですが、それ以外にも下記のような生活習慣や全身疾患などが絡み合って歯周病は悪化します。

歯周病の原因
細菌因子
お口の中には、およそ400種の細菌がいると言われています。これらの細菌は、歯磨きが正しく行われなかったり、食べかすが残っていたり、砂糖を過剰に摂取したりすると、これをエサに増殖し、ネバネバした物質を作って歯の表面にくっつきます。これをプラークと言います。このプラークの中の細菌が歯肉に炎症を引き起こし、やがて歯を支えている顎の骨まで溶かしていくのです。
環境因子
不規則な生活、喫煙、ストレス、偏った食生活などの生活習慣も歯周病の進行と深い関係にあります。
生体因子
免疫機能の低下で歯周病に対する抵抗も弱まるため、高血圧、糖尿病などの全身疾患のある方は特に注意が必要です。また、妊娠中も女性ホルモンの増加により歯周病になりやすくなります。

歯周病の進行

歯周病の直接的な原因であるプラークは、時間経過とともに石灰化して歯石になります。これが歯と歯肉の間に溜まると、歯周ポケットと呼ばれる溝ができます。 この歯周ポケットの中は細菌の温床で、繁殖が始まると炎症がおきて歯肉の腫れや出血が始まります。
さらに、炎症が歯周ポケットの深くにまで達すると、歯を支えている歯根膜や歯槽骨を溶かしていき、やがては歯を支えきれなくなり、歯がぐらつき始めます。
そして、そのまま放置していると、やがては歯が抜け落ちてしまうことになりかねないのです。

健康な状態

健康な状態は歯肉が淡いピンク色で引き締まっています。歯槽骨が正常で、歯周ポケットもありません。

健康な状態

歯肉炎

歯と歯肉の溝にプラークがたまると、歯肉に炎症が起きます。そして、歯周ポケットが形成されます。時折、歯磨きで出血することがあります。

歯肉炎

軽度歯周炎

歯肉の赤みが増し、炎症が進行しています。歯磨きでは出血を伴います。この時期から歯槽骨が溶け始めます。歯周ポケットは3mmから4mm程度まで広がりますが、自覚症状はほとんどありません。

軽度歯周炎

中等度歯周炎

歯肉の炎症がさらに進行すると赤く腫れ上がった状態になります。歯を支える歯槽骨が溶けて減少しています。歯周ポケットが5mmから6mmに広がり、歯が浮いたような感覚が起こります。硬いものが噛みにくくなってくるのがこの頃です。

中等度歯周炎

重度歯周炎

歯肉の炎症が悪化し、ブヨブヨとした状態になっています。歯を支える骨が極端に少なくなり、歯がグラグラすることが多くなります。歯周ポケットは7mm以上で、口臭も強くなってきます。

重度歯周炎

歯周病治療の流れ

STEP1
歯周病の検査
歯周病の検査

歯周病の進行度合いは、歯周ポケットの深さを検査することで判明します。健康な場合は1~2mm。進行するにつれて程度が深くなっていきます

歯周病の検査
STEP2
歯の表面のプラーク除去
歯肉縁上の歯石除去

歯周病治療の基本はプラークの除去です。プラークを放置すると、歯磨きでは取り除くことができない硬い歯石になります。したがって、プラークのうちに毎日の歯磨きでしっかりと取り除くことが大切です。

歯肉縁上の歯石除去
STEP3
歯肉縁上の歯石除去
歯の表面の歯石除去

歯磨きで取りきれない歯石を取り除きます。歯の表面や歯周ポケットの浅い部分にある歯石を取り除きます。歯石を除去することにより、歯磨きしやすい環境を整え、歯肉の炎症を和らげていきます。

歯の表面の歯石除去
STEP4
評価
評価

再検査を実施することで、どの程度まで歯周ポケットが改善できたかを評価します。健康と判断できる状態であればメンテナンスに移行します。改善が見られない場合には、再度歯石を除去するか、歯周外科治療を行うかを判断します。

評価
STEP5
歯肉縁下の歯石除去
歯肉縁下の歯石除去

歯周ポケットの深い部分に付着した歯石や歯周病菌に冒された組織を除去します。再付着の予防のために、歯の表面と歯根を徹底的にきれいにします。通常、局所麻酔下で治療を行います。

歯肉縁下の歯石除去
STEP6
定期的なメンテナンス
定期的なメンテナンス

歯周病は再発しやすい病気です。治療効果を長期間継続させるためには、定期的なメンテナンスを行う必要があります。通常は3ヶ月~6ヶ月に1度のペースで患者様に来院していただきます。

定期的なメンテナンス

歯周外科治療

ブラッシング指導や歯周基本治療を実施しても、歯肉の炎症や深い歯周ポケットが改善されない場合は、歯周外科治療を実施することもあります。
歯周ポケットの深さが6mm以上になれば、プラークや歯石の取り残しが生じます。なぜなら、歯根面の奥深くに付着した歯石は、手探りで歯石除去をしなければならず、目を閉じて処置しているのと同じであり、歯肉が邪魔をして、治療器具を思うように操作できないためです。

歯周ポケット掻爬術

歯周ポケット掻爬術

歯肉に麻酔をして、歯周ポケットの中の歯石やプラークを除去する手術です。歯周ポケットの深さが4mm程度の比較的軽症の場合に行います。

歯周ポケット掻爬術
歯肉切除

歯肉切除

歯肉が腫れあがっている場合、歯周病が悪化しないように不要な部分の歯肉を切除し、安定させるために縫合します。

歯肉切除
フラップ法

フラップ法

歯肉を切開して歯槽骨から剥離し、露出した歯根のプラークや歯石の除去、歯槽骨の清掃、およびダメージを受けた歯肉組織などを除去した後、歯肉を元の状態に戻します。

フラップ法

予防こそが最良の治療

予防こそが最良の治療

患者様が歯科医院に足を運ぶ理由の多くは、「歯が痛くなった」「歯がぐらつく」「歯ぐきから血が出る」という段階が一般的です。この場合、歯を削ったり、歯石を除去したり、応急処置を施せば症状はいったん改善します。しかし、虫歯や歯周病になった原因を突き止めて、きちんと対策しなければ、虫歯や歯周病は再発してしまいます。

現在では、虫歯や歯周病の原因が解明されていて、どうすれば虫歯や歯周病を未然に防げるかというリスクコントロールの方法が確立されています。ですから、自らのリスクを探り、そのリスクをコントロール(生活習慣やブラッシング方法の改善など)して、虫歯や歯周病が再発しないようにすることが本当の治療だと考えています。そうすれば、年齢を重ねても歯で苦労する心配はなくなります。予防こそが最良の治療だといえるのです。