入れ歯

入れ歯 入れ歯

入れ歯は、失った歯の機能を補う取り外し式の修復物です。入れ歯には、大きく分けて、部分入れ歯と総入れ歯があります。部分入れ歯は、歯を失った部位の型をとり、ピンクの床に人工歯を取り付けて、残った自分の歯にバネをかけて固定させます。

部分入れ歯をつくる過程では、ブリッジのように残った自分の歯を削ってダメージを与えることはありません。総入れ歯は、上顎または下顎のすべての歯を失っており、バネをかけることができない場合に使用されます。お口の状況に合った入れ歯を装着することで、食べる機能をある程度まで回復させることができます。また、歯を失った部位に入れ歯を装着することで見た目の審美面も改善できます。

入れ歯の構造

歯が1本でも残っていれば部分入れ歯となり、上顎または下顎のすべての歯を失っている場合は総入れ歯となります。
総入れ歯は、義歯床を粘膜に吸着させることで入れ歯を安定させ、人工歯を通じて噛む感触を顎の骨に伝えます。

入れ歯の構造
人工歯

失ったは歯の代わりとなる人工の歯です。多くは、硬質レジンといわれる歯科用プラスチック素材でできています。

義歯床

歯肉に接する人工歯の土台となるピンク色の床部分。材質は歯科用プラスチック素材でできています。

クラスプ

入れ歯を安定させるために、残った歯にひっかける金属製のバネ(留め金)です。入れ歯の浮き上がりを防ぎます。

入れ歯の
メリット・デメリット

入れ歯のメリット
メリット1外科処置を必要としない
インプラントのように外科処置を必要としないのは大きなメリットといえます。特に高齢の方は、全身疾患を抱えているために外科処置ができない場合がよくあります。
メリット2比較的に費用が安価である
入れ歯は、インプラントに比べると安価です。現在のインプラント1本あたりの費用は平均40万円前後ですから、複数本の治療となると経済的な負担が大きくなります。
メリット3歯を削る量が少ない
入れ歯の場合はブリッジと異なり、自分の歯を削ることはほとんどありません。自分の歯を削らないということは、残った自分の歯の寿命を伸ばすことにつながります。
入れ歯のデメリット
デメリット1慣れるまでに時間がかかる
入れ歯は、慣れるまでにそれなりの時間を要します。また使用中の入れ歯を修理したり、新しい入れ歯を製作する場合も同様です。
デメリット2見た目の問題
部分入れ歯の場合、金属のバネを残った自分の歯にかける必要があります。したがって、前歯などに装着する場合は、見た目が悪くなることがあります。
デメリット3歯に負担がかかりやすい
入れ歯を装着するため、金属のバネをかけた歯には負担がかかります。その結果、経年によって歯を失うこともあります。もちろん、入れ歯の設計を見つめ直すことで、歯を失うリスクを減らすことは可能です。

入れ歯の種類

レジン床の入れ歯

レジン床の入れ歯

歯肉に触れる部分がレジン(プラスチック素材)で作られた保険適用の入れ歯です。プラスチック素材は磨耗しますから、時間の経過とともに脆くなり割れやすくなります。また、噛む力をプラスチック素材で支えるためには、入れ歯を大きくそして厚く設計する必要があります。

平均して、金属床入れ歯の3倍程度(1.5~3.0mm以上)の厚みになり、厚みが大きいほど舌の稼動領域が狭くなるため、違和感を覚えやすくなります。またプラスチックは、熱を伝えにくい材質なので、食べ物の温度を感じづらく、結果として味覚が落ちることがあります。
※食事時に感じる味覚として、甘い・辛い・酸っぱい・しょっぱい・苦いなどがありますが、熱い・冷たいなどの温度感覚も、味覚を大きく左右します。

レジン床の入れ歯

金属床の入れ歯

金属床の入れ歯

歯肉に触れる部分が金属素材で作られた保険適用外の入れ歯です。金属床は強度が高いので、レジン床の入れ歯よりも小さく、そして薄く設計することができます。その結果、話しやすさや違和感の減少につながります。
レジン床の入れ歯は、噛む力が大きく加わると、たわんで変形を起こします。変形が大きければ大きいほど、入れ歯を支えているお口の中には予測できない力が生じ、粘膜の炎症や支えている歯へダメージを与えることになります。その点、金属床には「たわまない」「ねじれない」というメリットがあり、残された自分の歯や歯周組織に負担をかけません。

さらには、金属床は熱伝導性が高いので、食べ物の熱や冷たさを感じることができ、食事を美味しく楽しむことができます。特に部分入れ歯には金属床が有効です。金属床では金属のバネと床を一体に製作しますので寸法に狂いがなく、安定性があり、強固な金属の土台がしっかりと噛む力を受け止めます。

金属床の入れ歯として、当クリニックでは「コバルト床」と「チタン床」をご用意しています。

コバルト床
金属床で最も多く使われているのがコバルト床です。非常に薄い仕上がりで熱伝導率が高く、食べ物の熱さや冷たさを損ないません。耐久性にも優れ、安定した状態で長期間使用することができます。チタン床に比べると若干厚くなりますが、自然に近い装着感や快適感が得られます。
チタン床
床の部分にチタンを使った金属床です。インプラントにも使われているチタンは軽くて顎に馴染みやすく、装着したときの違和感がほとんどありません。また、生体親和性の高いチタンはアレルギー反応を引き起こす可能性が低く、金属アレルギーの方でも安心してお使いいただけます。
金属床の入れ歯

入れ歯は調整して
完成します

入れ歯は調整して完成します

入れ歯は出来上がってから、調整を繰り返して本当の完成となります。
入れ歯は、柔らかい歯肉の上にのせる構造です。噛む力が加わると歯肉は圧力を受けて縮んだり、口を動かすことによって伸びたりしますから、入れ歯が歯肉の上で安定させることは難しいのです。したがって、かみ合わせの調整やクラスプ(バネ)の調整を繰り返して、完成形に少しづつ近づけていくことが必要です。このことを理解して頂かないと、入れ歯をつくったけど使えないという悪い評価を下して、入れ歯の本当の実力が出る前に使用をやめてしまうのです。

入れ歯のメンテナンス

入れ歯のメンテナンス

どんな入れ歯でも一生そのまま使えるわけではありません。実際に「最初はフィットしていたのに、入れ歯が安定しなくなってきた」「どこかに当たって入れ歯をはめると痛い」といったお悩みをお持ちの患者様は多いかと思います。これは、入れ歯に使用している人工歯が磨耗したり、歯茎が徐々に痩せていくなどの理由により、かみ合わせが変化するためです。
合わない入れ歯をそのまま使用していると、入れ歯全体で分散させていた噛む力を、一部の歯や歯茎で負担することになり、特定の歯に過度の負担をかけたり、入れ歯の裏側の面や縁で歯茎を傷つけることに繋がりかねません。
また、かみ合わせが崩れることによって、顎関節周辺の筋肉が痛くなることもありますので、メンテナンスを定期的に受けましょう。